FC2ブログ

シーボの日記

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

UFO

誰にも話したことがないことがある。
今日はその話をしよう。

高校二年生のころ、僕には彼女がいた。同じクラスにいてカップルになった。典型的な恋だ。放課後、一緒に話しているときだった。

「わたし、Webサイトもってるんだ!」

当時、インターネットをはじめたきりだった僕は、彼女が持つ別の一面を知って驚いた。家に帰ってから、メールに送られてきたURLを自分のパソコンでーまだキーボードもうまく打てないのにー打った。どんなサイトが出てくるのか一抹の不安を覚えもしたが、ただ単に日記を綴っているだけだった。5月27日の日記を見返すと、僕のことが書かれていた。

5月27日 告白された!
一年生のとき一緒のクラスだったS君に告白された!彼が私のことを好きだなんて驚いたけれど、彼は当分昔に気持ちが伝わっているものだと思ってたみたい笑 そのあと喫茶店に一緒にいって話をした。自分の気持ちはまだわからないけれど、なんとなく好きになれそうだったから付き合ってみることにした!よろしくね!>S君

つい一週間前にこんな日記が全世界に発信されいたことにびっくりした。けれども、公認の恋人になったみたいで、その時の自分は嬉しさが強かった。メールを送ってみると彼女も嬉しかったようで、上機嫌のメールが返信された。夜遅くだったので、その日は眠った。翌日から、彼女の日記を昔まで遡って読むようになった。

その週末にはデートをした。映画だった。待ち合わせ時間に遅刻して、たいそう彼女は不機嫌そうだった。映画を見たあとはなんとか機嫌も持ち直したようで、ファミレスでの食事では会話が弾んだ。

「今日のことはなんて書くの?」

こう聞くと彼女の機嫌はよくなるようだ。


あるとき、ひょんなことでケンカになった。原因はよくわからなかったが、ひどく中傷された。あなたは○○だからいけない、○○しなきゃ・・・。僕はただ困惑するばかりで、対応がわからなかった。その日の日記は更新されなかったが、後日、語調はやわらかになったものの、僕に対する注意はかかれたままだった。

その翌日、クラスで僕は奇怪な視線を受けることになる。特に女子からは好奇の目で見られている感じがした。そう、もうおわかりかと思うが、彼女の日記は女子全員知っていたのだ!

放課後、彼女に問い詰めた。

「どうして誰が見てるか教えてくれなかったのさ!」

「だって聞かなかったじゃない!」

「どうして日記をみんなに見えるように書くんだよ?」

「私の勝手でしょ!」


そういうと彼女はそっぽを向いてしまった。僕のプライバシーはどうなるんだ、という不満を飲み込んで、その場を去った。その日の日記は、露骨な部分を抑えて更新された。

歯車は簡単に狂うもので、別れはその一週間後だった。別れ話は以前のファミレスだった。その当時にはすっかり愛想をつかしていた僕は彼女に同じ質問を投げかけた。


「どうして日記を書くんだい?」

「他の人のプライバシーも書くんだろ?」

できるだけ嫌味にならないように努めた。

「そうね、どうして私は日記を書くのかしら。最初はほんの好奇心だったのよ。でも、友達が見てくれるようになって、楽しい日記を書こうと思った。できるだけ詳しく、楽しかったことも、辛かったことも書き残そうと思ったの。自分の、あるいは他人のプライバシーを切り売りしているような感触もあったわ。でも、見てくれる友達とは仲良くなれるような気がしたの。Sと一緒にデートしたことも、ケンカしたことも、私にとっては全部大切な思い出なの。」

僕は不器用にスパゲッティを巻きつけた。

「でも、それは君の主観だろ?君にとって楽しいことも、僕にとって楽しいわけじゃない。ましてや勝手にプライバシーを書かれて、クラス全員に知られてるとなっちゃあ、僕はどうすればいいんだ?」

「じゃああなたも日記をインターネット上で書けばいいじゃない!」

彼女は実にうまくスパゲッティを巻きつけて、口に運んだ。僕は目に見える形でため息を吐いた。そのあとはトントン拍子に別れ話が進んだ。実にあっさりとした別れだったが、僕は翌日からブログというものを始めることにした。

「全部大切な思い出、かぁ・・・」

ディスプレイに映る、今日の日記を眺めては思い出す。そしていま、場所は都内のファミレス。僕は同じ質問を投げかけられている。

「どうしてブログを書くの?」

僕はクルクルとスパゲッティを巻きつける。5年前よりは上達しているけれど、まだまだうまくまとまらない。さあ、これから君の質問にどう応えようかな。


*フィクションです

| 帽子の中 | 23:27 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://seaborgium.blog54.fc2.com/tb.php/1244-d1d6da39

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT